■ Hello School Library 一般作品(詩)■
Hello Schoolが選んだ一般の方の作品です。
千羽鶴
ベンジャミン

入院してる友達のために折ってるのと
その子はちょっと淋しそうに

鶴を折っていました

それを手伝おうと
わたしも折ったのですが
できあがった鶴の
羽を広げようとしたとき

その子はあわてて

羽は広げちゃいけないのと
わたしの手を押さえつけながら

だって飛んでいってしまうじゃないのと
とても悲しそうに

その羽をたたみました

わたしは
折り方を知っていても
祈り方を忘れていたのだと

いまにも飛び立ちそうな
その
うすい羽を

両手のひらで
やさしく押さえてあげました


作品の著作権は作者が保持します。
無断転載を固く禁じます。
形式…口語自由詩

主題=「日常の出来事の中から気づいたこと」

主な表現技法
解説

※はじめに
詩というものは、読み方は自由であり、ここで解説する内容は
あくまでも私(作者)の主観によるものであることをあらかじめ
記しておきます。


まず技法的なことから述べると、この作品では目だった技法は
用いられていません。

全体を眺めれば、冒頭は情景描写からはじまり、そこに登場人物
「その子」のセリフが何度かあらわれてきます。


特筆するとするならば、その、「その子」のセリフが「 」抜きされて
おらず、詩の文章の一部として組み込まれていることです。
その効果は、「 」抜きにしてしまうと、その話者の存在が強調され
てしまい、情景、つまりこの作品においては(「鶴を折っている様」)
が希薄になってしまうので、それを防ぐ効果があります。


また、この作品の最大のポイントは、「祈る」という文字と、「折る」
という文字が似ていることを指摘している点
です。また「inoru」は
oru」と共通の韻を持っていることも、さらなる効果を与えていると
思われます。


折るという行為が必ずしも祈るという行為に直結していないにも
かかわらず、それが同等の行為として印象付けられていることに、
この作品の意義があるのではないかと、私は思います。


最後に付け加えるとするならば、これは実話であり、「その子」の
セリフである「だって飛んでいってしまうじゃないの」が、つまり、
「居なくなってしまう恐れと、それを跳ね除けようとする強さ」を
持ったセリフであることが、この作品の印象をさらに強くしている
のではないかということです。


日常の会話の中には、こういったさりげない一場面からも強烈な
印象を受けることが多々あります。それを詩として表現することは、
つまり内面を「かたち」にあらわすことであり、そこに詩が存在する
ということを私たちは忘れてはいけないと思うのです。

朗読 Tanpopo (MP3 909KB)
 インターネットラジオ 「ぽぽの放送」担当
Windows Media Playerが立ち上がるので、画面を小さくするか隠したりして、
本文を見ながら聞くと効果的です。
作者…ベンジャミン
 「現代詩フォーラム」主軸投稿者。  メインサイト…
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