■ Hello School Library 一般作品(詩)■
Hello Schoolが選んだ一般の方の作品です。
ブレス
望月ゆき

送電線の下をくぐって
アスファルトの海を
ぼくたちは、
泳いで、


はりめぐらされる
緯度や経度に
足をとられながらも
ひたむきに
日帰りの旅をくりかえす
ねむる前、ときどき
アスピリンをかみ砕く
そんなふうに つかの間 
痛い場所を忘れる


限りあるこの世界の
底で
明滅する、リアル
まぶたの奥でくりかえされる、その
呼吸音の記憶をたよりに
あしたの方角を
さがす


泳いで、
ぼくたちは、
息つぎのしかたを思いだすために
何度でも、生まれる
いつか 散っていくまで
砂時計を反しながら
泳いで、


いつも
季節だけがそれを越えて
まぼろしみたいに、遠ざかる

 
作品の著作権は作者が保持します。
無断転載を固く禁じます。
形式…口語自由詩

主題…「くりかえされる日常の無常さと未来への展望」

主な表現技法…倒置法
解説
※はじめに
詩というものは、読み方は自由であり、ここで解説する内容はあくまで
も作者・編者の主観によるものであることをあらかじめ記しておきます。

まず、一連目の

>送電線の下をくぐって
>アスファルトの海を


でイメージできるのは「都市生活」です。
それを受けた二連目に、くりかえされる日常、そこでくりかえされる
「ぼくたち」のもがきや痛み、そして回避についてを表現しています。

三連目では、前半部分よりもさらに抽象化した表現になりますが、
ここで読みとってもらえたらと思うのは、
世界は決して無限ではなく、
同じように「ぼくたち」の痛みも日常も決して無限ではないということ。
目の前で起こる現実(リアル)を受け入れながら前にすすんでいく
しかないのだ
ということです。


四連目は、一連目の終わりの

>泳いで、

を受けてその続きのようになっています。

>ぼくたちは、
>息つぎのしかたを思いだすために


この「息つぎ」がこの詩のテーマとなっている言葉です。
息つぎのしかたは人それぞれで、正しい方法などないのです。
息つぎを忘れて時におぼれてしまっても、また「生まれて」やり直せる
のです。
「ぼくたち」が泳ぐ「海」は、アスファルトの「海」なのですから。

そうやって泳いで(すすんで)いくことの「もどかしさ」と「潔さ」の紙一重
を表現しました。

この詩は、たとえば読み手を元気づけたり励ましたりするような直接的
な言葉はいっさい使っていません。
どちらかというと、主観的な表現をしながらも客観的に書いています。
わたしは、詩全体をとおして共感してもらいたいというよりも、部分的
に「あ、これわかるな」というような、読み手側の状況や経験と少しでも
重なるようなとこだけ重ねて感じ取ってもらう、ということを求めて書いて
います。

一応の解説はしましたが、詩の受け取り方は、読み手側の自由と個人
的には思っています。ただ、読んだ人が自身をふりかえる機会のひとつ
になればいいな、といつも思っています。

朗読 ベンジャミン (MP3 1.25MB)
 東京ベンズカフェ
  朗読コンテスト 複数回入賞
朗読 Tanpopo (MP3 1.29MB)
 インターネットラジオ 「ぽぽの放送」担当
Windows Media Playerが立ち上がるので、画面を小さくするか隠したりして、
本文を見ながら聞くと効果的です。
作者…望月 ゆき
 「現代詩フォーラム」主軸投稿者。  メインサイト…「海の角砂糖」
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