■ Hello School Library 一般作品(詩)■
Hello Schoolが選んだ一般の方の作品です。
忘れ花
腰越広茂

いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです

日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはかなしさのためでもなく
翼が、陽に透けるのに似ています
空の耳に声は届いたろうか

つくしの胞子で星星をなぞらえるように
あなたの後ろ姿がしんとそよぎ
凛とした目に映る風の遠いこと
手に手を重ね
海溝に泳ぐ魚のいかにも無音なかたち
その唇からもれた刹那
わたしは、鳥となりました無数に

星が宿るというのは本当のことです
またひとり、またひとりと風に染まり
いちども空は落ち果てません
(雨は、帰るのです)

わたしの目には
今でも空が映っているだろうか
風のなか、花が咲く


忘れ花=忘れ咲きの花=時節がすぎてから咲く花。
その時でないのに咲くこと。また、その花。かえりざき。
 

作品の著作権は作者が保持します。
無断転載を固く禁じます。
形式…口語自由詩

主題…「つながりと記憶と存在性」

主な表現技法
解説

※はじめに
詩というものは、読み方は自由であり、ここで解説する内容
はあくまでも作者・編者の主観によるものであることを予め
記しておきます。


1連目。
ここに登場する「わたし」の「絶句した」際の
追憶する場面
挿入部としています。
2連目から追憶です。

2連目。
「涙」は、誰が(「わたし」及び「あなた」)流しているのかは、
敢えて明言していません。
ここで重要なのは、「空の耳に声は届いたろうか」という
点です。この
声の持ち主は、「花」という可能性を潜め涙を、
ただただ流し空間に存在している
のです。
そこで、3連目の「〜星星をなぞらえる〜」に移行しています。

3連目。
ここでは、
「あなた」の雰囲気と、その存在に呼応する
「わたし」を描いています。

「あなた」からもれた一瞬の事象に反応する「わたし」。
そして3連目の「〜無数に」から4連目の「星が宿る〜」
につながります。

4連目。ここは、
時空を超えた つながりを示しています。
非存在と存在を、つなげる意識であると思います。

最終連。
ここで
「わたし」の意識は、「わたし」の現在に帰着しますが、
「今」というのは、過去、現在、未来にある全ての「今」でも
あります。
「わたし」は、ここで初めて真に自問することが出来ます。

この点に関しては、私自身も含めて読者の方にも考えて
頂きたい事柄です。

そして風のなか、花が咲き一連目の絶句につながるのです。
「風のなか、花が咲く」ということは、その花は、散る(かも)
しれないということも追記しておきます。

この詩の全体を通して読み取ってほしいのは、つながりです。
出来る限り解説してみましたが、私は、今現在、詩作する際
には、心情と心情などの形象(イメージ)を言葉を用いて詩へ
と定着させることのみに苦心しておりますので自分の詩を
うまく解説することは出来ません。
的を得ず私の解説に不足があると思いますが、
詩は、書く
場合も読む場合も心で感じる事
だと思っています。
詩は、言葉ではなくても、あらゆるところに存在していると
思います。
ですから、私の解説に囚われずに自由に感じて、お読み
下さることを願います。

朗読 Tanpopo (MP3 1.51MB)
 インターネットラジオ 「ぽぽの放送」担当
Windows Media Playerが立ち上がるので、画面を小さくするか隠したりして、
本文を見ながら聞くと効果的です。
作者…腰越広茂
 「現代詩フォーラム」主軸投稿者。  メインサイト…As H System
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