■ Hello School Library 一般作品(詩)■
Hello Schoolが選んだ一般の方の作品です。
明け方の碧
服部 剛

真夜中の浜辺に独り立つ
君の傍らに透明な姿で佇む <詩> は
耳を澄ましている

繰り返される波の上から歩いて来る
夜明けの足音

君の胸から拭えぬ悲しみは
夜空に瞬いている あの 小さい星

やがて
波音が繰り返されると
星達は白みゆく空に消え
水平線からゆらめき昇る朝陽が
緩やかに世界の色を照らす頃

君の隣に佇む <詩> は
頬を撫でる風となり
体内を廻り

魂の燭台に仄かな碧(あお)い火を灯す
 

作品の著作権は作者が保持します。
無断転載を固く禁じます。
形式…口語自由詩

主題…「日常に対する自己の方向性」

主な表現技法…擬人法・体言止め
解説

※はじめに
詩というものは、読み方は自由であり、ここで解説する内容
はあくまでも作者・編者の主観によるものであることを予め
記しておきます。


 詩について、まず個人的に感じていることを伝えさせて
いただくならば、
「詩は自分の分身である」ということです。
人間という存在は無数の地上の星であり、60億以上の
人間がそれぞれに「世界にたった一人」の存在であると
いうことに、僕は奇跡を感じます。

 人間と同じように、詩もまた、「世界に一人」と感じられる
ような、「この詩人でなければこの詩は書けない」という
ような詩であり、読者に伝わる詩の言葉が書ければ、その
作品には価値があると思います。 

 ですから
詩作とは「自己探求」でもあり、この人生という
夢の途上で経験する様々な想い出の場面を映した写真を、
アルバムに貼っていくこと
のように感じています。 

 この詩は6年位前に書いたものを書き直したものです。
ある夜、詩の朗読会を終えて、終電を降りて深夜の道を
歩いていると、「自分は独りきりで歩いているのに、何故か
独りではない」ということをふと感じました。それは夜風が
優しく頬を撫でるような感覚でした。その時、「目には見え
ない風のような<詩>という存在は、時に孤独な人生の
道程でも、ずっと傍らで共にいてくれる存在なのだ」と感じ
ました。

 その「目には見えない姿の<詩>という存在と共に、
ありふれた日常の場面を見ると、そこに<詩>が潜んで
いるという感覚は、詩を書き続けるにつれて、揺るがない
ものとなって来ています。

 ですから、
詩作とは「目に映る場面と対話し、目には
見えない者の声に耳を澄ます」こと
だと感じます。例えば、
パソコンをしているあなたの手元にコップがあるとします。
そのコップはあなたに何を語りかけているでしょうか?
コップの中に満たされて湯気を立てているあたたかい紅茶
が今のあなたの心でしょうか?それとも空っぽになって
あたたかい紅茶を注がれるのを待っているのが今の
あなたの心でしょうか?

 そのような「詩的目線」で日常の場面をじっと見つめると、
目に映るいろいろなものが、無言の内に自分に語りかけて
来ます。その感覚を養うと、繰り返される平凡な日常が、
だんだん不思議なものと思えて来ます。幼い子供だった頃、
大きく開いた好奇心の瞳で、目に映る新鮮な世界をみつめ
たように。 

 「明け方の碧」という詩について語らせていただくなら、
人は時に「独り」であり、その哀しみを抱えながらも夜明けを
願うように待つ想いは誰もの心の奥にあるものであり、この
詩を読んでくれたあなたが、この詩の中に身を置いて、無人
の浜辺で独り、潮騒を聞きながら静かな夜明けに佇み、
揺らめき昇る朝陽の生きる力を感じ、ろうそくに灯り優しく
揺れる炎は、いつまでも魂の中に消えることのない詩情の
光である
という想いが伝わるならば幸です。

朗読 ベンジャミン (MP3 1.25MB)
 東京ベンズカフェ
  朗読コンテスト 複数回入賞
Windows Media Playerが立ち上がるので、画面を小さくするか隠したりして、
本文を見ながら聞くと効果的です。
作者…服部 剛
 「現代詩フォーラム」主軸投稿者。  メインサイト…風に舞う葉に記された言葉
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