■ Hello School Library 一般作品(詩)■
Hello Schoolが選んだ一般の方の作品です。
八月の濃闇
石瀬琳々

茜色の朝焼けに目覚めていくたびに

かすかな鳥の羽ばたきに緑の森を思い
窓辺に揺れる光に暮らしを思う
額を触れゆく風はやがて
空の高みへと還ってゆく
確かな鼓動に手のひらを重ねて
送る日々はこんなにもやさしい

けれど 八月に耳をすませば
漠とした濃闇が身ぬちに広がる
遠い昔戦(いくさ)があった 今この瞬間にも
その声なき声に耳をふさいではいけない
遠く連なる墓標の上に
過ごして来たいくつもの時間がある
この濃闇に目をそらしてはいけない
人と人とが争う罪を 痛みを 慟哭を
ひたと見すえる瞳が欲しい
強い瞳が私は欲しい

茜色の朝焼けに幾たび目覚めていこうと
八月の濃闇はそこに在り続ける
その闇を宿し生きていく勇気があればと
この光に揺れる静かな夏に
 
作品の著作権は作者が保持します。無断転載を固く禁じます。
形式…口語自由詩  
主題=「戦争と平和への願い」


主な表現技法
解説

※はじめに
詩というものは、読み方は自由であり、ここで
解説する内容はあくまでも作者・編者の主観に
よるものであることをあらかじめ記しておきます。


私も戦争を知らない世代です。この詩はさる
八月、新聞記事に目をとめて、そういえば今年
もそんな日がめぐって来たのだなと、漠然と
思った事から生まれました。漠然と・・・
そう思った自分が恥ずかしかったのです。
世の中は平和になりました。戦争の記憶も
薄れつつあります。けれど、このおだやかな
日々は戦争の犠牲の上に成り立っているのだと、
豊かな今こそ、見つめる必要があるのではない
かと、自戒の思いで書きました。記憶は風化
させたくないものです。語り継いでいかなければ
いけませんね。

 
 

朗読 Tanpopo
(MP3 1.97MB)

 インターネットラジオ
 「ぽぽの放送」担当
Windows Media Playerが立ち上がるので、
画面を小さくするか隠したりして、本文を
見ながら聞くと効果的です。
作者…石瀬琳々
http://blog.goo.ne.jp/rosa-multiflora  風とオーチャードグラス
現代詩フォーラム」主軸投稿者。
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