■ アリとキリギリス 21世紀Version ■
21世紀の童話はこんなふうになっちゃうんだね。
 秋になった。
 今年もいつもの年と同じように、余裕で目標を達成し、自分は巣の備蓄のエサで暮らす計画を立て、
暖かい冬の生活を考えていた。しかし、大変なことが起きたのだ。
 巣の中の重役アリから、このままのペースでいくと、今年の備蓄の量が巣の全体数に対しての割合が
足りないのである。要するに、楽をして冬を越えるほどの余裕のある備蓄ではないとのことであった。
 急遽、みんなに新しい目標数値を言い渡され、自分もまたその目標に対してエサを確保することを
余儀なくされてしまった。
 毎年決まってこの場所にはこういうエサがあるということはわかっていたが、今回のように、
イレギュラーの状態になってしまうと、かえって決まった場所にはもう何もなく、自分で新しいエサの
場所を見つけなくてはならなくなってしまった。
 2、3日探しつづけても、大きな収穫はなく、疲れた体で巣に戻ってくると、なんと、新人のアリが新しい
エサのありかを発見し、みんなから脚光を浴びていた。
 自分も含めた目標に届かないアリは、冷たい視線でいかにも邪魔者扱いのような態度であった。
ほんの数ヶ月前はオレはこの巣では必要不可欠な存在だったのだ。みんな、オレが表彰されたことを
思い出してくれよ。そんな気持ちでみんなに接しても、反応は何もなかった…。
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